という申し込みがありました。
もっとも、これは石川光明氏とは私は兄弟も啻《ただ》ならぬ親密の中のこと故、同氏からの話もあり、他の玉山氏その他の人々とも日頃懇意の仲柄であるから、私を引っ張り出そうということになったと見えます。私は、仕事の方でも畠違い、最初から関係もないことで、大してお役にも立つまいが、彫刻界の発達向上のためのこととあればお仲間へ這入ろうと承諾をしたのでありました。それから、毎晩天神の玉山氏宅へ参って、人々と膝《ひざ》を交え、発会の相談にあずかったわけでありました。
さて、会を起すについては、会則を作り、会頭、理事、評議員というようなものの必要を生じて来る。会の取り扱うべき事柄についてもいろいろ討議する。毎月常会を開き、青年子弟の養成ということについて、特に重要視し、まず若い人々の製作を集めて常会に出品し優劣を評定して褒美《ほうび》として参考書の類を授けるということなどを初めとして、種々《いろいろ》審議されました結果、彫刻の大会を年に一回開催するという話が纏まったのであります。そうして、会費のようなものも、甲乙丙の三種で、師匠分の人は甲、独立している程度の所は乙、まだ年季中の者で、弟子連中は丙というように公平に取り扱い、会の維持法等については、合理的に能《よ》く相談を致し、また会頭、幹事並びに理事部長の任期何年という事を討究の末ほぼ決定しました。
底本:「幕末維新懐古談」岩波文庫、岩波書店
1995(平成7)年1月17日第1刷発行
底本の親本:「光雲懐古談」万里閣書房
1929(昭和4)年1月刊
入力:網迫、土屋隆
校正:noriko saito
2006年12月22日作成
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