幕末維新懐古談
竜池会の起ったはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)今日《こんにち》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)学者|物識《ものし》り

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)より[#「より」に傍点]
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 さて、今日《こんにち》までの話は、私の蔭《かげ》の仕事ばかりで何らこの社会とは交渉のないものであったが、これからはようやく私の生活が世間的に芽を出し掛けたことになります。すなわち自分の仕事として、その仕事が世の中に現われて来るということになる訳です。といって、まだまだようやくそれは世の中に顔を出した位のものであります。
 それは、どういう事から起因したかというと明治十七年頃日本美術協会というものがあった。これが私の世の中に顔を出した所で、いわば初舞台とでもいうものであろうか。この一つの会が私というものを社会的に紹介してくれたことになるのであります。が、この事を話そうとすると、その以前に遡《さかのぼ》って美術協会というものの基を話さなければなりません。それを話しませんと顔を出した訳が分らん
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