幕末維新懐古談
年季あけ前後のはなし
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)今日《こんにち》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)茂木|醤油《しょうゆ》問屋

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)コウ[#「コウ」に傍点]
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 さて、今日《こんにち》から考えて見ても、当時私の身に取って、いろいろな意味において幸福であったと思うことは、師匠東雲師が、まことに良《よ》い華客場《とくいば》を持っていられたということであります。
 たとえば、この前お話したように、札差《ふださし》の中では、代地の十一屋、天王橋の和泉屋喜兵衛、伊勢屋四郎左衛門など、大商人では日本橋大伝馬町の勝田という荒物商(これは鼠の話の件《くだり》で私が師匠の命で使いに参った家)、山村仁兵衛という小舟町の砂糖問屋、同所堀留大伝(砂糖問屋)、新川新堀の酒問屋、吉原《よしわら》では彦太楼尾張、佐野槌、芸人では五代目菊五郎、市川小団次、九蔵といった団蔵《だんぞう》、それから田舎の方では野田の茂木|醤油《しょうゆ》問屋など、いずれも上華客《じょうとくい》の
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