幕末維新懐古談
猫と鼠のはなし
高村光雲
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)稽古《けいこ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)上野|東叡山《とうえいざん》派
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+(「縻」の「糸」に代えて「手」)」、83−9]《こす》り
−−
少し変った思い出ばなしをします。鼠の話を先にしましょう。
私が十五、六歳の時です。師匠の手元にいて、かれこれ二、三年も稽古《けいこ》をしたお蔭《かげ》で、どうやら物の形が出来るようになって来ました。それで、そろそろ生意気になって、何か自分では一廉《ひとかど》の彫刻師になったような気持で、師匠から当てがわれた仏様の方をやるのは無論であるが、それだけではたんのう[#「たんのう」に傍点]出来ないような気持で、何か自分の趣向を立てたもの、思い附いたものを勝手にやって見たいという気が起って来る。もっとも、こういうことは、師匠の眼の前で実行してはお叱《しか》りを受けますから
次へ
全12ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング