荒っぽく仕事をするので、どうも、甚だ愉快で、元来、まかり間違えば自分も大工になる筈であったことなど思い出して、独りでに笑いたくなるような気持にもなったりしたことでありました。
だんだんと仕事の進むにつれて、大仏の頭部になってきましたが、大仏の例の螺髪《らはつ》になると、一寸困りました。俗に金平糖というポツポツの頭髪でありますが、これをどうやっていいか、丸太を使った日には重くなって仕事が栄《は》えず、板では仕様もない。そこで、考えて、神田の亀井町には竹|笊《ざる》をこしらえる家が並んでおりますから、そこへ行って唐人笊を幾十個か買い込みました。が、螺髪の大きい部分はそれが丁度はまりますけれども、額際とか、揉《もみ》上げのようなところは金平糖が小さいので、それは別に頃合いの笊を注文して、頭へ一つ一つ釘で打ちつけていったものです。仏さまの頭へ笊を植えるなどは甚だ滑稽でありますが、これならば漆喰《しっくい》の噛り付きもよく、案としては名案でありました。
「やあ、大仏様の頭に笊が乗っかった」
などと、群衆は寄ってたかって物珍しくわいわいいっております。突然にこんな大きなものが出来出したので、出
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