通の見世物小屋位あるわけになります。出来上がったので、それを例の三人の友達に見せました。
「うまく行った。これならまず大丈夫勝利だが、今度はこれをこしらえるに全部で何程金が掛るか、これが問題です。そこで、この事は仕事師に相談するのが早手廻しで、この四本の柱をたよりにして仕事をするものは仕事師の巧者なものより外にない。早速当ってみよう」
ということになりました。で、御徒《おかち》町にいた仕事師へ相談をすると、これは私共の手で組立てが出来ないこともないが、こういう仕事は普通の建物とは違いカヤ[#「カヤ」に傍点]方の仕事師というものがある。それはお城の足場をかけるとか、お祭りの花車《だし》小屋、また興行物の小屋掛けを専門にしている仕事師の仕事で、一種また別のものですから、その方へ相談をしたらよろしかろうというのでありました。それではその方へ話をしてくれまいかと頼むと、早速引き受けて友達を伴《つ》れて来てくれました。
私はそのカヤ[#「カヤ」に傍点]方の仕事師という男に逢って見ました。
私の肚の中では、この男に逢って雛形を見せたら、恐らくこれは物になりません、というだろうと思っておりました。もし、そういってくれたら却って私にはよかったので、この話はそれで消えてしまう訳。もしそうでもないと、話がだんだん大きくなって大仏が出来るとなると、私の責任が重くなる。興行物としての損益はわかりませんが、もし損失があっては資本を出す考えでいる野見さんに迷惑が掛ることになります。どうか、物にならないといってくれればいいと思って、その男に逢いますと、仕事師は暫く雛形を見ておりましたが、
「これはどうもうまいもんだ。素人の仕事じゃない。この梯子の取付けなどの趣向はなかなか面白い。私共にやらされてもこう器用には出来ません」
といって褒めています。それで、これを四丈八尺の大さに切り組むことが出来るかと訊《き》くと、訳はないという。この雛形ならどんなにでもうまくいくというのです。そして早速人足を廻しましょう、といっております。その男の口裡《くちうら》で見ると、十日位掛れば出来上がりそうな話。野見さん初め他の友達もこれでいよいよ気乗りがして来ました。
しかし、この仕事はカヤ[#「カヤ」に傍点]方の仕事師ばかりでは出来ません。仕事師の方は骨を組むのでありますが、この仕事は大工と仕事師と一緒でな
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