白山のような秀麗な火山があるので、ちょうど欧洲アルプスでは瑞土の粗剛(Swiss Ruggedness)に、伊太利の典雅(Italian Grace)とが、程よく配合されて、壮大な山岳景を作っているように、日本アルプスでは、花崗岩や石英斑岩のような、堅硬で兀々《ごつごつ》した火成岩塊に、火山岩の柔和な曲線や、斉整せる輪廓を配合して、ここに世にも稀なる線と色彩のシムフ※[#小書き片仮名ホ、1−6−87]ニイを奏でている。
そうして火山岩と火成岩とが、日本北アルプスに交錯して、噴出したり迸発《ほうはつ》したりした結果、北アルプスの山形は、槍ヶ岳や鹿島鎗ヶ岳(ただし鹿島鎗ヶ岳は観方にもよるが)のような、孤剣空を削るような、尖鋭な峻峰もあるが、概して花崗岩は塊状を呈し、火山は円錐形に盛りあがるものであるから、山岳は穹窿《ドーム》形の高塔を築き上げて、人類の起工した大伽藍の荘厳を憶い起させる、穂高岳、霞沢岳、笠ヶ岳、蓮華岳、常念岳、大天井岳、剣岳などは、いずれも肩幅が濶《ひろ》く胛肉《こうじゅう》隆々として勃起している、山形分類を行えば、先ず穹窿《ドーム》形の部に入るべきであろう。
しかも北
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