岳の降灰がぷーんと舞いあがるので、顔も、喉も、手も、米の粉でも塗ったようにザラザラとなる、その上に、剛《こわ》い笹ッ葉で、手足が生傷だらけになって梓川の本谷――それは登るときに徒渉したところより、約十町の川上に、突き落されるように飛び下りて、四ツン這いに這ってしまった。

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文中に前穂高とあるは、御幣岳の北部より下れる一支峰にして、梓川に臨み、上高地温泉または河童橋より、最も近く望見し得らるる、三角測量標を有せる低山をいう。
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底本:「山岳紀行文集 日本アルプス」岩波文庫、岩波書店
   1992(平成4)年7月16日第1刷発行
   1994(平成6)年5月16日第5刷発行
底本の親本:「小島烏水全集」大修館書店
   1979(昭和54)年9月〜1987(昭和62)年9月
入力:大野晋
校正:伊藤時也
2009年8月18日作成
青空文庫作成ファイル:
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