梓川の上流
小島烏水
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)明科《あかしな》停車場
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)千島|桔梗《ききょう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)※[#「皺」から皮を抜いたものに「俊」の作り、145−14]皺《ひだ》
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一
明科《あかしな》停車場を下りると、犀《さい》川の西に一列の大山脈が峙《そばだ》っているのが見える、我々は飛騨山脈などと小さい名を言わずに、日本アルプスとここを呼んでいる、この山々には、名のない、あるいは名の知られていない高山が多い、地理書の上では有名になっていながら、山がどこに晦《か》くれているのか、今まで解らなかったのもある――大天井《おてんしょう》岳などはそれで――人間は十人並以上に、一寸でも頭を出すと、とかく口の端にかかる、あるいは嫉みの槌《つち》で、出かけた杭が敲《たた》きのめされるが、この辺の山は海抜いずれも一万有尺、劫初《ごうしょ》の昔から間断なく、高圧力を加えられても、大不畏《だいふい
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