好悪などをとがめ、旧識同伴の間闊《とおどおしき》を恨み、生前には名聞《みょうもん》の遂げざるを愁《うれ》え、死後は長夜《ちょうや》の苦患《くげん》を恐れ、目を塞《ふさ》ぎて打臥《うちふ》し居たるは、殊勝《しゅしょう》に物静かなれども、胸中騒がしく、心上苦しく、三合の病いに[#「三合の病いに」に傍点]、八石五斗の物思い[#「八石五斗の物思い」に傍点]あるべし」
と、いかにもその通りで、なまじい学問をした、智慧のある人ほど、よけい[#「よけい」に傍点]に病気を苦にする傾きがあって、容易に病気に安住することはできないのです。どうせこわれものの身体[#「こわれものの身体」は太字]です。おそかれ早かれ、一度は死なねばならぬ、という覚悟ができていそうなものですが、それが実際はできていないのです。いつまでも健康がつづくように思い、いつまでも生きていられるもののように考えているから、いざ病気にでもなると、いらざるよけいな心配までするのです。心配ならよいが心痛するのです。
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死ぬことを忘れていてもみんな死に[#「死ぬことを忘れていてもみんな死に」は太字]
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