た結果、この恋愛曲線を思いつき、これならば十二分に君の心を動かすことが出来るだろうと予想して、この手紙を書きながらも、僕は、生れてから始めて経験するほどの、胸の高鳴りを覚えつゝあるのだ。君が結婚しようとする雪江さんは、僕もまんざら知らぬ仲ではないから、君たちの永遠の幸福を祈ってやまぬ僕は、こゝに君に向って恭《うや/\》しく恋愛曲線を捧げ、以て微意を表したいと思うのである。君は、僕のような武骨一点張りの科学者が、恋愛などという文字を使用することにすら、滑稽を覚えるかも知れぬが、然《しか》し僕は君の考えて居るほど「冷血」ではなく、多少の温かい血は流れて居るつもりだ。流れて居ればこそ、君の結婚に対して無関心では居られなくなり、頭脳を搾って、縁起のよかるべき名をもった、この贈り物を考え出したのである。
明日に迫った君の結婚に、今夜差迫って手紙を書くということは甚だ礼を欠いているかも知れないが、恋愛曲線の製造が今夜でなくては行い得ないものだから、気を揉みながらも、やっと明日の朝、君の手許に届けることになってしまった。定《さだ》めし君は、多忙を極めて居るであろうが、然し僕は、君がどんなに多忙な中
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