歴史的探偵小説の興味
小酒井不木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)小説に就《つい》て
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)六《むつ》ヶ|敷《し》い
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)そのいかなさ[#「いかなさ」に傍点]
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森下雨村氏から歴史的探偵小説に就《つい》て何か書かないかといわれて、はい、よろしいと易《やす》受合いをしたものの、さて書こうと思うと何にも書けない。これが犯罪学に関したことなら、参考書と首っ引きで、相当に御茶を濁《にご》すことが出来るが、歴史的探偵小説を研究した参考書などは一冊もなく、ただもう自分の読んだ(それも多くは遠い過去に読んだ)少数の作品に就てのぼんやりした感じより浮ばないのであるからほとほと閉口してしまった。私の大好きなオルチー夫人に就ては馬場氏が御書きになるというのであるから、いよいよ以て書くことがなくなってしまう。私の頭の中の歴史的探偵小説に関するライブラリーからオルチー夫人の作品を取り除いたならば、丁度、むかし基督《キリスト》教徒に掠奪されたアレキサンドリアの
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