、それをたよりに行きついて見ると若い美しい女が一人で居る。色好みの喜平次は思わずも引きつけられて、厚顔《あつかま》しくも女に言い寄ると、案外容易に靡《なび》いて、二人は怪しい夢を結ぶ。ふと、喜平次が夜半《よなか》に目を覚ますと、自分の傍に寝て居るのは、美人どころか異形の化物だったので、ヒャッと言って飛び出すと化物が跡を追って来る。漸《ようや》く化物をまいてある里に辿りつくと、一軒の家で酒もりの声がする。喜平次は胸を撫で下し、その家に避難しようと思って覗き込むと、意外にもそれは妖怪変化たちの集会で、そーらよい肴が来たと、中からみんなが追かけて来る。驚いた喜平次は又もや夢中になって駈け出し、幸いに彼等の追跡を免れて、ホッとしながら、ある里にはいると、鶏の声がしたので、やれ嬉しやと思って道を急ぐと、傍の木蔭から、鬼の形相をした白髪の老婆が、珍しや喜平次といって抱きつき、ウンといって彼は気絶するという、怪談としては、ありふれた筋であった。
 ところが、この物語の前半が、会員たちの間に話の花を咲かせたのである。即ち、女にしろ、男にしろ、一しょに寝たものが、目がさめた時、異形の化物に代って居たら、
前へ 次へ
全22ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング