髭の謎
小酒井不木

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)入口の扉《ドア》を

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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   博士の死

 それは寒い寒い一月十七日の朝のことです。四五日前に、近年にない大雪が降ってから、毎日曇り空が続き、今日もまた、ちらちら白いものが降っております。
 塚原俊夫君と私とは、朝飯をすましてから、事務室兼実験室で、暖炉を囲んで色々の話をしておりました。と、十時頃、入口の扉《ドア》を叩く音がしましたので、私が開けてみると、二十歳ばかりの美しいお嬢さんが、腫《は》れあがった瞼《まぶた》をして心配そうな様子で立っておりました。
「塚原俊夫さんはお見えになりますか?」
 とお嬢さんは小さい名刺を私に渡しました。
「お願いがあって来ましたとおっしゃってください」
 俊夫君は私の渡した名刺を見て、
「さあ、どうぞお入りください」
 と言いました。その名刺には「遠藤雪子」と書かれてありました。
 やがてお嬢
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