うになりました。三毛はその後姿を現さず、永久に行方不明になりましたが、私の不具になったのも、やはり先妻の祟りだと信じて疑わないのであります」
 話が終った時、雨はやんで夜は白々と明けかけていた。名古屋でその人に別れて、家に駈けつけると、母は脳溢血で重態に陥っていたが、四日の後、とうとう一度も意識を恢復しないで死亡した。私は汽車の中のあの恐しい話が、何となく、母の死の前兆であったような気がしてならないのである。



底本:「怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 恋愛曲線」ちくま文庫、筑摩書房
   2002(平成14)年2月6日第1刷発行
初出:「週刊朝日特別号」
   1926(大正15)年7月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:川山隆
校正:宮城高志
2010年4月22日作成
青空文庫作成ファイル:
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