秘密の相似
小酒井不木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)執《と》って
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ほっ[#「ほっ」に傍点]
−−
一
おなつかしきT様。
私は、何といって私の今の心もちをあなたに御伝えしてよいやら、本当に迷ってしまいました。あなたは今頃定めし私を怨んでおいでになることと思います。本当に私こうして筆を執《と》って居ましても、恐しいような、恥かしいような、また悲しいような思いになりまして、何から書きかけてよいやらわからなくなりました。私はこれから、あなたにとってはまったく意外な、世にも恐しい私の秘密を御伝え致そうと思います。そうして私は心からあなたに御わびして、あなたの御ゆるしを乞おうと決心致しました。この決心をする迄に私はどれ程苦しんだか知れません。しかしその苦しみは、秘密があなたに発見される時の苦しみに比ぶれば何でもないものであろうと思うと、私は一切を告白せずに居《お》られなくなりました。無論両親は大《おおい》に反対致しましたが、私が頑としてきき入れぬものですから、遂にやむを得ず同意
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