なりの心臓を人工的に拵《こしら》えて、本来の心臓の代用をさせることは出来ないだろうかと考えたのです。生理各論の講義をきいた時、私は心臓がただ、一種の喞筒《ポンプ》の役をするのみであるということを知りました。而《しか》も役目はそれ程簡単であるにも拘《かか》わらず、心臓ほど大切な機関はありません。心臓が動いて居る間は、たとい人事不省に陥って居ましても、その人は死んだということが出来ません。そこで私は若《も》し、心臓が停止したとき、直《ただ》ちに人工心臓に置きかえて、外部からエネルギーを与えて、喞筒《ポンプ》の作用を起さしめ、血液を全身に送ったならば、死んだ人をも再び助けることが出来、なお、場合によっては永遠の生命を保持せしめることが出来るだろうと考えたのです。全身をめぐって来た大静脈の血液を喞筒《ポンプ》の中へ受取り、これを活栓《かっせん》によって大動脈に送り出すという極めて簡単な原理で人工心臓が出来上ります。活栓を動かすには電気モーターを使えばよいから、地磁気が存在する限り、電気の供給は絶えることなく、従って人工心臓を持つ人間は、地球のある限り長生が出来るであろう……などという空想にさえ
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