、凡《およ》そ今から二千七八百年|前《ぜん》のことです。即ち、その時代に、ギリシャに自然哲学者が出まして、宇宙及び人類の生成について考え万物の本源を地水火風の四元素に帰し、この四元素が離合集散して万象を形成して居るのだという所謂機械説を樹《た》てたのであります。
ところが、その後同じギリシャに、プラトン、アリストテレスなどが出まして、人間に就て深い研究を行った結果、精神と肉体をはっきり区別し、精神を主とし、肉体を従と致しましたために、精神現象は機械的には説明出来ぬという所から、生気説が復活するに至りました。そうしてこの生気説は、キリスト教の起るに連れて、宗教的色彩を帯び凡そ千年間というもの人々の心を支配して居《お》りました。
すると第十六世紀になって所謂文芸復興期が来《きた》り、今日の科学者の先駆があらわれ、人体の解剖生理の学が発達して、再び機械説が勝利を得、あらゆる生活現象を物理学及び化学の力のみで説明しようとする、医理学派、医化学派などと称する極端な学派があらわれました。
然るに、第十八世紀の末にハラーという大生理学者があらわれ、生物にのみ特有で、無生物には見られない現象を指
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