ても、他の毒を用いた時には成功すると限りませんから、出来るだけ多くの場合を試みて置く必要があり、従ってその努力は大したものでした。
 もともと人工心臓は人類の恐怖を救うのが目的ですから、家兎に成功すれば、これを人間に応用する必要があります。――私は今、人類の恐怖を救うのが目的だと申しましたが、咯血をした以後は、他のことを顧みる遑《いとま》なく、ただもう、人類の恐怖から救えば、楽園を形成することが出来ると思ったのです。恐怖のない世界! それは何という嬉しい世界でしょう?――で、先ずその次の階段として、家兎よりも大きな犬について人工心臓を試みることにしました。犬に対してはただ大きな喞筒《ポンプ》を用うればよい訳でして、手術などには何の変ったところもなく、ただ家兎の場合と違って居るのは電力が余計に要るぐらいのものです。無論犬については、一旦死んだのを甦らせる実験だけを試みたのですが、その結果、犬では死後十分間以内に取りかかれば目的を達することがわかりました。つまり動物が大きければ、人工心臓の取り附けは幾分遅くなってもかまわないということがわかりました。これは多分血液の凝固性の大小に基くものだ
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