》りますから、その心配はなかったのです。
さて、愈々人工心臓の発明が完成したときの私たちの喜びは如何ばかりであったか、御察しが出来るであろうと思います。小春日和に木の葉に狂う虻《あぶ》の羽音のような音をたてて電気モーターが廻転しながら、目にもとまらぬ速さで活栓を働かし、為に麻酔から覚めた家兎が、台上に縛られたまま五時間、十時間、平気で生存を続けて居る姿を見たとき、私たちはあい抱いて歓喜の情に咽《むせ》びました。モーターの音をはじめ、炭酸瓦斯を除くための音や、酸素を供給する音などは、家兎自身に取っては、或は不愉快であるかも知れませんが、人類がこの世に出現して以来、何人《なんぴと》も完成し得なかった人工心臓研究の第一の難関を破り得た私たちの歓びには、家兎も心あらば同感であってくれるだろうと思いました。況《いわ》んや、更に研究の歩《ほ》を進めて一旦死んだ身体に人工心臓を装置して、生命を取り戻すことが出来るようになるならば、家兎も、心から感謝してくれるだろうと思いました。而《しか》も第一の難関を切り抜けた以上、第二のこの難関は比較的容易に切り抜け得《う》る筈です。で、私たちは、日ならずしてこ
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