人工心臓
小酒井不木

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)抑《そもそ》も

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)苦心|惨憺《さんたん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)にやり[#「にやり」に傍点]
−−

       一

 私が人工心臓の発明を思い立った抑《そもそ》ものはじまりは、医科大学一年級のとき、生理学総論の講義で、「人工アメーバ」、「人工心臓」の名を聞いた時でした。……
 と、生理学者のA博士は私に向って語った。A博士は曾《かつ》て、人工心臓即ち人工的に心臓を作って、本来の心臓に代《かわ》らしめ、以《もっ》て、人類を各種の疾病《しっぺい》から救い、長生《ちょうせい》延命をはかり、更に進んでは起死回生の実を挙げようと苦心|惨憺《さんたん》した人であって、その結果一時、健康を害して重患に悩んだにも拘《かか》わらず、撓《たゆ》まず屈せず、遂《つい》に一旦その目的を達したのであるが、夫人の死後、如何《いか》なる故か、折角の大研究を弊履《へいり》の如く捨てて顧みなくなった。私は度々《たびたび》、その理由を訊ねたが
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