入れて、東京まで運んだりまた持ちかえったりしたのだが、化学の記号を暗号に使ったり、ゲルセミウムを使用したりするくせに迷信的なことをやるというのは、実に犯罪者というものの特徴を示していると思うよ。
それはとにかく、君のおかげで、川上糸子が無事に帰り、誘拐団が逮捕せられたことは、実に喜ばしいことと思う……」
皆さん、これで、この事件は解決されました。このことは、新聞にも出ないですみましたから、川上糸子がそういう恐ろしい目にあったことを、世間一般の人はちょっとも知らないのであります。ただこの事件で、俊夫君にもはっきり分からなかったのは、なぜ、彼らが糸子の仮死体を警察に見せにきたか、
「まさか迷信のためとは気がつかなかった」
と俊夫君も笑って申しました。
底本:「小酒井不木探偵小説選 〔論創ミステリ叢書8〕」論創社
2004(平成16)年7月25日初版第1刷発行
初出:「子供の科学 六巻一〜五号」
1928(昭和3)年1〜5月号
入力:川山隆
校正:小林繁雄
2005年11月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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