手術
小酒井不木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)光の下《もと》で、
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)九|疋《ひき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#二つ目、三つ目の「?」は太字]
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×月×日、私の宅で、「探偵趣味の会」の例会を開きました。随分暑い晩でしたが、でも、集ったのは男の人が五人、女の人が三人、私を加えて都合九人、薄暗い電燈の光の下《もと》で、鯰《なまず》の血のような色をした西瓜をかじり乍《なが》ら、はじめは、犯罪や幽霊に関するとりとめもない話を致しました。
「……それにしても九人というのは面白いですねえ。西洋の伝説にある妖婆《ようば》は、九という数《すう》を非常に好むという話ですから」と、会社員で西洋文学通のN氏は言い出しました。いつの間にか私たちは怪談気分にひたって居たこととて、妖婆という言葉が、いつもより物凄く私の胸に響きました。
N氏は続けました。「シェクスピアのマクベス劇で、三人の妖婆が魔薬を煮るところは可なり恐しい思いをさせられます。その魔薬の成分の一つとして、
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