血友病
小酒井不木

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)上《のぼ》った

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「蚌のつくり」、第3水準1−14−6]
−−

「たとい間違った信念でもかまいません、その信念を守って、精神を緊張させたならば、その緊張の続くかぎり、生命を保つことが出来ると思います」
 医師の村尾氏は、春の夜の漫談会の席上で、不老長寿法が話題に上《のぼ》ったとき、極めて真面目な顔をして、こう語りはじめました。
「今から十年ほど前、私が現在のところで開業して間もない頃でした。ある夏の日の朝、私は、同じ町内の下山《しもやま》という家から、急病人が出来たから、すぐ来てくれといって招かれました。この家は老婦人と、それにつかえる老婆との二人ぐらしでしたが、主人たる隠居さんを私は一度も見たことがなく、又その家から往診に招かれたこともありませんでした。何でもその隠居さんは非常な高齢で、しかも敬虔《けいけん》なクリスチャンだということでしたから、町内の人たち
次へ
全8ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング