は、第二のかくれ家に来て、「ほッ」と一息つきました。
「貴様が箕島を殺したばっかりに、折角手に入れたダイヤモンドを、みすみす捨ててしまった」と、京山は残念そうな顔をしていいました。
この京山の言葉によると、ピストルを発射したのは仙波だと見えます。
「仕方がないよ。箕島の奴、俺等二人を出し抜いて、自分一人でダイヤモンドをせしめようとしたんだもの。奴にとられるよりはまだましだ」と、仙波は、箕島を殺したことを左程後悔もせず、またダイヤモンドを失ったことをあまり惜しがりもしないような態度で言いました。
「これでいよいよ日本の土地を離れることが出来るのだと思って喜んでいたのに、すっかり計画がくるってしまった」と、京山は吐き出すようにいいました。
「まあそんなに悲観するな」と仙波は諭《さと》しました。仙波は甚だ気が短かい性分でして、だからこそ、一時の激情に駆られて、久しく親密にしていた箕島を殺したわけですが、京山が甚だしく悄気《しょげ》かえっているのを見ると、先ず自分から落ついて、京山をなぐさめるより外はありませんでした。
「でも惜しいよ」と、京山はなおもあきらめられませんでした。
「おいおい」
前へ
次へ
全25ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小酒井 不木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング