じまったのです。
一しきり、どたんばたんという音が続きましたが、そのうちに突然ピストルの音がしたかと思うと、それと同時に「うーん」とうめく声が聞えました。そうしてしばらくの間、ぴたりと物音がとだえましたが、その時室外に突然どやどや沢山の人の足音がしました。即ち警官たちが、N男爵邸の盗難の報に接して、かねて目星をつけていた三人の巣窟を襲ったのです。
警官たちが、三人のいた室にはいるためには、相当の時間を要しました。即ち扉《ドア》を破らねばならなかったからです。室の中には火薬の煙のにおいが漂っておりました。そうして、警官たちが、懐中電燈をもって室内を照らして見ますと、家具の狼藉の中に、箕島――即ち、いましがたダイヤモンドを嚥《の》みこんだ箕島が、左の胸部から血を流して死んでおりました。
三
もし箕島がダイヤモンドを嚥みこんでいなかったならば、仙波も京山も生命を失うような悲劇を起さなかったでしょうが、箕島の腹の中にあるダイヤモンドを取り返そうと二人が計画したばかりに、はからずも悲運を招くことになりました。
B町の巣窟の秘密の通路から首尾よく逃げ出した仙波と京山の二人
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