信をもっていいました。

       四
 九時少し前、仙波は法医学教室へ自働電話をかけに行って、にこにこしながら、帰って来ました。二人とも熟睡と朝食との為に、溌溂とした元気でおりました。
「どうだった?」と京山がたずねました。
「上首尾さ」と、仙波は答えました。「午後の正三時に解剖が行われるというのだ」
「そりゃ都合がいい」と、京山も嬉しそうにいいました。「時に、電話で、どういって先方へたずねたのかい?」
「別にむずかしいことはなかったさ」と、いいながらも仙波は少なからず得意です。
「こちらは警察のものだが、昨晩、S区B町で殺された死骸はもう着きましたかとたずねたのさ。すると、小使の声で、今朝早く着きましたという返事よ。〆《しめ》たと思ってね。それから、解剖は何時からですかというと、午後の三時からだという答えなんだ。万事工合よく行ったよ」
 それから二人は扮装に必要な道具を吟味しました。そうして、午後二時四十分ごろ法医学教室をたずねた時には、二人はまったく、私服の警察官らしい姿になっておりました。
 だから、二人は教授室へ、何の疑惑もなく迎え入れられました。京山は教授の顔を一目見る
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