稀有の犯罪
小酒井不木
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)一寸《ちょっと》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しみ[#「しみ」に傍点]
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一
悲劇というものは、しばしば、まるでお話にならぬような馬鹿々々しい原因で発生するものであります。ほんの一寸《ちょっと》した出来心や、まったく些細ないたずらから、思いもよらぬ大事件を惹き起すというようなことは、よく物語などにも書かれているのであります。
これから私が御話しようとするのも、やはり馬鹿々々しい原因で、三人の宝石盗賊がその生命を失う物語であります。というと、察しのよい読者は「ハハア宝石を取り扱った探偵小説だな。今どき探偵小説の中へ宝石を持ち出すなんて古い古い」と仰《おっ》しゃるにちがいありません。実際そのとおりで、宝石とピストルにはお互いにもう厭き厭きしてしまいました。
けれども、懐中時計が宝石を断念する事ができぬと同じように、探偵小説もなかなか宝石と絶縁することはむずかしいのであります。まったく、宝石の色と光とはたまらなくいいものです。じっと見ていると、
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