中《しょくあた》りのようでしたので、たぶん暑気にでも当てられたのであろうと思って、その日は医師を招かないのでしたが、夕方になってさいわいに嘔吐もなくなり熱も去って、翌日は何の異常もなく過ぎました。
ところが、さらにその翌日、すなわち七月二十五日にやはり先日と同じような症状が始まり、あまりに嘔吐がはげしくて一時人事不省のような状態に陥ったので、令嬢のきよ子さんは慌てて女中を走らせ、かかりつけの医師山本氏、すなわちあなたの診察を乞《こ》うたのでした。その結果、おそらく食物の中毒だろうという診断で、頓服薬《とんぷくやく》をお与えになりますとその効があらわれて、夕方になると嘔吐は治まり、熱も去って患者は非常に楽になり、その翌日は何のことなく過ぎたのであります。
するとまたその翌日、七月二十七日に、やはり前回と同じ時刻に同じような症状が始まり、嘔吐ばかりでなく下痢をも伴い、患者は苦痛のあまり昏睡《こんすい》に陥りました。急報によって駆けつけたあなたは、患者の容体のただならぬのを見て、初めて尋常の中毒とは違ったものであろうとお気づきになりました。で、あなたは令嬢に向かって、周囲の事情をお訊《き
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