が届いた。見ると、表面には彼女の宛名がタイプライターで書かれてあったが、差出人の名は何処にも書いてなかった。それは白い紙で包まれた長方形の箱で紅い紐でゆわえてあったから、どう見ても一ポンド入の菓子箱としか思われなかった。
「お菓子でないかしら、それにしてはちと重過ぎるようだが」と彼女は友だちに向って訊ねるように言った。
「きっとお菓子よ。まあ、あけて御覧なさい。名刺が中に入れてあるに違いないから」
ウォーカーは友だちのいうままに、好奇の念に駈られながら、紅い紐を解き、白い紙を開くと、果して菓子箱が出たので、やがてその蓋を開いた。
と、その時、ドーンという音がしたかと思うと、ウォーカーはアッという間もなく、血まみれになって即座に絶命した。彼女の頭は殆んど胴体からもぎ離され、箱の中から雨のように飛び出した鉛や鉄の弾丸によって、心臓も肺も滅茶々々に潰されてしまった。
対座していたウォーカーの友だちは、不思議にも災難を免れた。彼女はただ頭部に軽傷を負っただけで一時は腰を抜かさんばかりに驚いて、ぼんやりしていたが、やがて気を取り直して、警察に急を報ずると、警察からは時を移さず、ブレスナンと
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