日の朝までに帰ってこぬと、私はどうしたらよいでしょうか」
 と木村さんは私に向かって、いかにも心配そうな顔をして申しました。
「まあご心配なさいますな。俊夫君はきっと取りかえしてくれるでしょう」
「けれど俊夫さんは私や竹内ばかりにかまっていて、あんなエックス光線のようなむだ骨折りをさせたのですから、あの間に犯人はもう遠い所へ高飛びしてしまったにちがいないです」
 私は、どう言って木村さんを慰めてよいかに迷ってしまって、黙ったままじっと考えこみました。
 するとそこへ俊夫君が額に汗をにじませて帰ってきました。
「木村のおじさん、よく来てくれました。先刻は失礼しました。竹内さんはどうしましたか」
「竹内はいっしょに帰ってきてから間もなく、疲れたから、下宿でしばらく眠ってくると言って帰りました」
「竹内さんは怒っていたでしょう?」
「だって俊夫さんはあんな大袈裟なことをするのですもの。私は生まれて初めてエックス光線にかけられましたよ」
「あんなものを度々かけてもらうのはよくありません」
 と俊夫君は皮肉を言いました。
「で、俊夫さんはもう犯人の見当はついたのですか」
「つきましたよ」
「え?
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