うにも痛くて仕様がないので、ある小さな病院へとびこんだのです。
 院長は眼科医ではなかったですが、私が三百円ばかりはいって居る財布を投げ出して、(ほかにまだ五百円ばかり、高飛びするつもりで腹巻の中に持って居ましたが)どうか当分のうち入院させてくれといったら、金に眼が眩《くら》んだのか、素性もきかずに病室をあてがって、それから眼を診察してくれましたが、珍しい眼の出血だといって、暫らく洗ってくれたから、幸いに出血はとまりましたよ。ヒヒ、とまるのが当り前です。ところが、血はとまっても痛みがどうしてもとまりません。で院長は、とりあえずモルヒネを一筒注射してくれましたが、モルヒネの力はえらいもので三十分たたぬうちに、痛みはけろりとなおりました。
 さて、翌日の晩、奴をやっつけた同じ時刻になると、右の眼が又もやずきんずきんと痛み出しました。で、またモルヒネを注射してもらいましたら、痛みはけろりとなおりました。
 すると又、その翌日の同じ時刻に、右の眼が前晩《ぜんばん》よりも一層はげしく、ずきんずきんといたみ出しました。そこで又モルヒネの注射をして貰いましたが、こんどは一筒ではきかず、二筒で始めて痛
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