しても、はげしい雷を落しました。私は、多分、妊娠のために生じた一時的の心情の変化だろうと思い、そのうちには平静に帰る時期もあるにちがいないと、出来得る限り我慢しておりましたが、妻のヒステリックな行動は日毎に募り、遂には義夫に向って、「お前見たような横着《おうちゃく》な児は死んでしまうがよい」とさえ言うようになりました。しかし、義夫は非常に従順でありまして、はたで見ていてもいじらしい程、母親の機嫌を取りました。女中や下男が義夫に同情して、義夫をかばうようにしますと、それがまた却って妻の怒りを買い、後には、大した理由もなく義夫を打擲《ちょうちゃく》するようになりました。私も困ったことが出来たと思い色々考えて見ましたが、恐らく分娩までの辛抱だろうと思って、義夫に向って、それとなく言い含め、お母さんが、どんな無理を言っても、必ず「堪忍して下さい」とあやまるように命じましたので、義夫は、私の言い附けをよく守って、子供心にも、かなりの気苦労をするのでありました。幸いにその頃、義夫は小学校へ通うようになりましたので、妻と離れている時間が出来、義夫にとってはむしろ好都合でありました。
学校は私の家か
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