、一たいこんどは作者がどういう「オチ」をつけるだろうかと少なからぬ好奇心にかられる。そしていつも終りに至って一ぱい喰わされる。だまされて喜ぶなんて、探偵小説の愛読者なんかになるものではないなどと考えながらも、やはり引きつけられてしまう。
 英国に居る時分、私はドイルとフリーマンの作品に気狂いになっていたが、近頃はあまり読まない。しかし、嫌いになった訳ではなくて、みんな内容を知っているからである。(ポオやルヴェルは内容を知っておっても読まずにおられない。)シャーロック・ホームズの冒険、記念、帰国の三集に収められた物語のプロットにはいつも感心する。この三集だけは、当分のうちは探偵小説界にその燦然たる光を失わないであろう。
 私は軽いユーモアに充ちた作品よりも、いわば凄みを帯んだユーモアを持った作品が好きである。だからポオの The Tell−Tale Heart. の如きものが、喰いつきたいほど好きである。これに反してルブランやマッカレーあたりのユーモアは、面白いとは思っても、それに耽溺するほどにはなれない。それにもかかわらずオルチーのユーモアはたまらなくいい。しかし、何故《なにゆえ》かと
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