に傍点]飛ばして読むと「御冗談」となるという点が少し「偶然」ではないかと思われるが、これはあまりに虫のいい註文であろう。
何《いず》れにしてもこの作は近来の傑作である。暗号を中心とした推理小説といえば、先ずポオの「黄金虫」、ドイルの「舞踏人形」、ルブランの「うつろの針」、それからカロリン・ウエルスの「|彫んだ暗号《ゼ・クレーヴン・クリプトグラム》などを思い起すが、この作はそれ等の作に優るとも劣っていない。又暗号そのものから言ってもたしかに優れていると思う。リーヴはなるべく奇抜な材料を得んと心掛けている作家であるが、彼が「アドヴェンチュアレス」の中に入れている暗号は極めて平凡なものである。ル・キューの「暗号6」ではその解式を示さず、また同じ作者の「|不吉な十三《フェータル・サーチーン》」の一篇中の暗号も驚くに足らない。自分は「二銭銅貨」の作者が益《ますます》自重して、多くの立派な作品を提供せられんことを切望し、それと同時にこの作が他の多くの立派な探偵小説家の輩出する導火線とならんことを祈るのである。
[#地付き](〈新青年〉大正十二年四月号発表)
底本:「日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集」創元推理文庫、東京創元社
1984(昭和59)年10月26日初版
1987(昭和62)年2月14日8版
※この文章は底本巻末の「日本探偵小説全集付録1」に掲載されています。
入力:小酒井博士
校正:大野 晋
2004年11月2日作成
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