「心理試験」序
小酒井不木

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)僭越《せんえつ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)理路|井然《せいぜん》として、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き](『心理試験』、大正十四年七月、春陽堂)
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 江戸川乱歩兄から、こんど創作第一集を出すについて序文を寄せよとの事。わが探偵小説界の鬼才江戸川兄の創作集に、私が序文を書くなどということは、僭越《せんえつ》でもあり恥かしくもあるが、同時にまた、私に序文を書かせてくれる江戸川兄の心が嬉しくてならぬ。で、とにもかくにも御引受して、さて、筆を取って見ると、少なからぬ興奮を覚え、いささか、かたくなった為体《ていたらく》である。だから、うっかりすると、甚しく脱線したことを書かぬとも限らない。
 二年ほど前、博文館の森下雨村氏からの紹介で、江戸川兄の処女作「二銭銅貨」を読んだとき、私は感心したというよりもむしろ驚いた。日本にこれだけの作家があろうとは思いも寄らなかったからである。実はその頃、何故日本に優れた探偵小説作家が出ないだろう
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