ったかとたずねた。で、筆者が、通った旨を答えると、更に三人は娘が厭々《いやいや》引張られて行きはしなかったかとたずねた。そこで、喜んでついて行った様子だと答えると、三人はそうかと言って、再びボートに乗って引返して行ったというのである。
 この手紙は新聞紙に発表されたということであるが、トリビューン紙には載っていない。バーンスによると、更にその後、アダムスという男が、メリーを問題の日曜日にホボーケンのある渡し場で見たことを申し出た。彼女はその時、丈《せい》の高い色の黒い男と連立っていて、二人はエリジアン・フィールドの休憩茶屋へ行ったというのである。このことを既記のロッス夫人にたずねると、その日、その通りの男が店へたずねて来て、一ぱい飲んでから森の方へ行ったのは事実であって、暫らく経ってから女の悲鳴のようなものが聞えて来たが、そのようなことはいつもあり勝ちのことであるから別に気にとめなかったというのであった。
 以上の話の中の女が果してメリーであったかどうかはわからないから、このことが、事件の真相を形《かたちづく》っているものとは無論言われないのである。けれどもポオはこれを、有力なる論拠と
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