ども、「マリー・ロオジェ事件」を読まれた読者は、以上の点を除いては、文中に挙げられた大小すべての事項が遅かれ早かれ洩《もれ》なく、分析解剖されていることに気附かれるであろう。実際一面からいえば、痒《かゆ》いところへ手の届くように書きこなされてあるのであって、これは到底凡手の企て及ばざるところである。
最近わが国に於ても、盛んに探偵小説の創作が試みられるようになったが、「マリー・ロオジェ事件」のような本格探偵小説を書く人は極めて少ないのであって、私自身も本格探偵小説が書いて見たいと思いながら、つい、むずかしいので手を出し兼ねている。この時にあたって、本格探偵小説の元祖ともいうべき「マリー・ロオジェ事件」が平林氏の忠実にして流暢なる翻訳によって「新青年」に紹介されたことは欣喜に堪えぬところである。読者はよろしく再読三読して、その妙味を味ってほしいと思う。
[#地付き](「新青年」大正十五年夏季増刊号)
底本:「人工心臓」国書刊行会
1994(平成6)年9月20日初版第1刷発行
底本の親本:「新青年」博文館
1926(大正15)年夏季増刊号
初出:「新青年」博文館
1926(大正15)年夏季増刊号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:川山隆
校正:門田裕志
2007年8月21日作成
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