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 我日本国の帝室は地球上一種特異の建設物たり。万国の史を閲読するも此の如き建設物は一個も有ること無し。地上の熱度漸く下降し草木漸く萠生し那辺箇辺の流潦中若干原素の偶然相抱合して蠢々然たる肉塊を造出し、日照し風乾かし耳目啓き手足動きて茲に乃ち人類なる者の初て成立せし以来、我日本の帝室は常に現在して一回も跡を斂めたることなし。我日本の帝室は開闢の初より尽未来の末迄縦に引きたる一条の金鉄線なり。載籍以来の昔より今日並に今後迄一行に書き将《も》ち去るべき歴史の本項なり。初生の人類より滴々血液を伝え来れる地球上譜牒[#底本では「牒」は「爿+(世/木)」となっている、282下−14]の本系なり。之を人と云えば人なり。之を神と云えば神なり。政治学的に人類学的に宇内の最も貴重すべき一大古物なり。上無始に溯りて其以前に物あることなく、此宇内の最も貴重すべき古物をして常に鮮美清麗の新物たらしめ、下無終に延きて其以後の物有ること無からしむること是れ豈我儕日本人民の至頂に非ずや。其至頂を成就せんと欲せば如何。皇室と内閣と別物たらしむるに在るのみ。
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の如きである。東
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