死刑の前
幸徳秋水

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)一個《ひとり》も

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)社会的|価値《バリュー》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから7字下げ]
−−

[#ここから7字下げ]
第一章 死生
第二章 運命
第三章 道徳―罪悪
第四章 半生の回顧
第五章 獄中の回顧
[#ここで字下げ終わり]

     第一章 死生

       一

 わたくしは、死刑に処せらるべく、いま東京監獄の一室に拘禁されている。
 ああ、死刑! 世にある人びとにとっては、これほどいまわしく、おそろしい言葉はあるまい。いくら新聞では見、ものの本では読んでいても、まさかに自分が、このいまわしい言葉と、眼前直接の交渉を生じようと予想した者は、一個《ひとり》もあるまい。しかも、わたくしは、ほんとうにこの死刑に処せられんとしているのである。
 平生わたくしを愛してくれた人びと、わたくしに親しくしてくれた人びとは、かくあるべしと聞いたときに、どんなにその真疑をうたがい、まどったであろう。そして、その真
次へ
全24ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
幸徳 秋水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング