ば、なんでもないのである。
 わたくしは、かならずしもしいて死を急ぐ者ではない。生きられるだけは生きて、内には生をたのしみ、生を味わい、外には世益をはかるのが当然だと思う。さりとてまた、いやしくも生をむさぼろうとする心もない。病死と横死と刑死とを問わず、死すべきのときがひとたびきたなら、十分の安心と満足とをもって、これにつきたいと思う。
 いまやすなわち、そのときである。これが、わたくしの運命である。以下すこしくわたくしの運命観を語りたいと思う。



底本:「日本の名著 44 幸徳秋水」中公バックス、中央公論社
   1984(昭和59)年10月20日初版発行
入力:林 幸雄
校正:今井忠夫
2003年12月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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