んの為に猫を買い占めるんですか」
「そうすると三味線が出来なくなって洋楽が盛んになるというんです。卓一君は洋楽が好きなもンですから」
「ハヽア――どうも変っていますな」
「えゝ、変っていますとも。そうかと思うと、アメリカから女サーカスを招聘《しょうへい》して一儲けするんだから資金を貸せだの、困ってる劇団があるから、金を出してやれだの――この頃はひどく連珠《れんじゅ》に凝りましてね」
「連珠? あゝ五目並べの事ですか」
「五目並べなんていおうものなら、卓一君は眼に角を立てゝ怒りますよ。五目並べなんていったのは昔の話で、今では高木名人考案の縦横十五線の新連珠盤が出来て、段位も段差のハンディキャップも確立するし、国技として外国に紹介するには最もいゝ競技で、国際親善の為に大いに発展させるべきものだといいましてね、その連盟とかに金を出せというんです。昨日の用というのもそれじゃないかと思っていました」
「どうして約束通り来なかったのでしょう」
「卓一君はね、何か途中でひょいと思いつくと約束も何にもない、すぐそっちの方に行って終《しま》いますのでね。そうかと思うと、急に思い立つと夜中でも何でも、どん
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