方へ越したのですが、二年経つか経たないうちに又々火事に遭ったのですね。その時も半焼だったのですが、彼は保険の勧誘員に二百円賄賂を贈りましてね、全焼と云う事にして、保険金の全額をせしめたのです」
「どうしてそれが分りましたか」
石子は膝を進めた。
「この賄賂を取った男から直接に聞いたのです。その男は外にも悪い事をしたと見えましてね、間もなく辞められましてね、私の勤めている会社へ暫く雇われていました。そんな風な男ですから、やっぱり真面目に勤まらず、先年辞職しましたが、私の宅《うち》へ遊びに来た時に、隣に支倉がいたと云う事を聞いて、懺悔話をして聞かせたのです。その男の考えもどうも高輪の方も放火らしいと云って居りました。そんな事で支倉を信用していたのが、間違っていた事がすっかり分ったのです」
期待していた話も矢張り単なる推測に過ぎないので、石子は落胆した。然し、少くとも保険金詐取の罪だけは確なようだった。
「その男の住所は分っていますか」
石子は聞いた。
「えゝ、分ってるには分っていますが、折角内済になっているのですから――」
谷田は口籠った。
「大丈夫ですよ。会社の方に告訴の意志がな
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