ける傲岸兇悪の態度に似もやらず、いと細き声を出して哀訴した。彼は遂に庄司氏に正面より敵すべからざる事を知ったのであろうか。それとも思い邪《よこ》しまなるものは遂に正しきものに面を向ける事が出来ないのであろうか。
 裁判長は終始厳正の態度を持しつゝ、不動産を売却する事につき尽力したる事ありや、四十通余の文書を隠したる事実ありや、被告に自白を強いるため骸骨を接吻せしめたる事実ありやと畳かけて質問した。
 庄司氏は断乎としてそのいずれをも否定した。書類云々の事は全く虚構の事実で、支倉が放火事件につき高輪署の刑事に贈賄して有利な調書を作製せしめたのだったが、数多き書類の中のそれだけが偶然紛失したので、支倉は恰も自分に有利な書類を尽く隠したように曲言したのであって、該書類は被告の考える如き重要なものでなく、のみならず其他の書類は全部提出してある旨を答えた。
 庄司氏の答弁の間支倉は絶えず哀願するような態度で、
「庄司さん、どうか本当の事を云って下さい」
 と低声で云い続けていた。
 裁判長の訊問が一通り済むと、能勢弁護人は裁判長の許可を得てきっと証人を睨み据えながら、鋭い訊問を投げかけた。
「喜
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