れば能勢氏只一人黙然として控えていた。
被告支倉喜平は別に身体の拘束は受けなかったが、物々しや警部一名、巡査四名、都合五名の警官に取巻かれて所定の席に着いていた。彼は法廷で怒号咆哮する許りでなく、時に証人等に打ってかゝる事があるので、かくは厳重に警戒せられたのである。
裁判長は咳一咳、之より審理を更新すると告げ、例によって被告の氏名年齢等を順次に問い質し、次で証拠調べに移った。
記録には次の如く書かれている。
「裁判長は証拠調べに移る旨を告げ、当院第一回公判調書に記載したると同一の各証拠書類及同公判調書記載を読みあげ、押収物件並に検証調書添附図面及記録等を示し、其都度意見弁明を求めたるに、被告はすべて当院第一回公判調書記載と同一の答弁をなせり。
裁判長は決定に基き証人を訊問すと告げ、召喚に応じ出頭したる庄司利喜太郎を入廷せしめたり」
六尺豊か鬼とも組まんずと云う庄司氏は威風満廷を圧しながら堂々と入廷した。彼は正に意気軒昂、邪は遂に正に勝たずとの信念何人も動かすべからず、気既にさしもの兇悪なる支倉を呑んでいるようであった。
彼は支倉と正に咫尺《しせき》の間に着席を命ぜられた
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