った。
「前略、僕は破壊主義の男ではない。トコギリ庄司の不正をさらけ出して庄司を免職させなければならんのだが、あなた方の出ように依っては頑張る者ではない。であれば免職するもせないも庄司の心一つにあるのである。アナタは大正六年三月十九日に神楽坂署長室に於て、保証人及尽力者として立って、私とどんな約束をして居るか、まさか忘れはせまい。君も牧師なんだから、牧師なら牧師らしく約束した事を実行するのはアタリマエではないか」
最後の公判
大震災に万物一様の破壊を受けて、再生の機会を与えられた更新第一回の公判は、支倉に取って千載の一遇、この機を逸しては好機再び到ろうとは思えない。彼はこゝに最後の努力を試みる事となった。
獄に投ぜられてより数年冤罪を叫び通し、殊に最近二、三年は公判廷にあってすら咆哮し怒号し、審理の進行を極力妨害した。その有様の猛烈、凄惨を極めた事は当時目撃した人を尽く顫え上らしたものである。神戸牧師をして、
「彼は被告として公判廷に出《い》ずる度に猛烈な兇暴態度を示しながら、且つ其雄弁と剛腹とは全法廷を慴伏《しょうふく》していた」
と嗟嘆《さたん》せし
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