るような事は毛頭|仕出来《しでか》さない。自分が出れば円満にみなが好いように解決を見る考えでいます。
 一、之までに仮令《たとい》誤判にあれ一審で死の宣告をされとるものが保釈や責付になった前例がない。又官房主事がアラユル書類を隠して偽造、罪ない者を無実の罪に陥れたと云う前例もない。又このたびの震災の如きも控訴院が設けられてからこのかた始めての事、かくも前例のない事でありますれば、よく御勘考の上、好き前例をこゝでお作り、名判官たるのその真価あらば、その真価を宜しく後にまで御発揮いたゞきたいのである」
 真に冤枉者として見れば彼の心事憐れむべきも、事実罪あるものとすると、何と虫の好い保釈願ではないか。

 もとよりこんな虫の好い保釈願が聞き届けられる訳はない。
 忽ち不許可となった。
 支倉は少しも屈しない。大正十二年も押詰った十二月十七日又々保釈願を出した。之は大分書き振りが不穏になっている。
「一、庄司利喜太郎は喜平を長の間神楽坂署に留置《とめお》き、そして長の間喜平をアラユル拷問に合せ、条件を持出し義兄弟になって」と云う書き出しで、例の書類の隠匿の事を相変らずクド/\と書き立てた保釈
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