、自分がやったと云って居るが、その間に何か有力な訊問はなかったか。
答 別にありませんでした。
問 被告の自白は虚偽の自白だと云わなかったか。
答 断じて申しませぬ。
問 発掘した骸骨を被告の口に当て接吻させ、又消毒してやると称して、被告の頭に石炭酸を掛けた事はないか。被告はそう云う事があったと申して居るぞ。
答 そんな事はありません。
問 其の当時被告は聖書会社より損害賠償の恐れあり、自己所有家屋を妻静の名義にして置けば安心である、又取られない様に警察で保護してやるから、貞を殺した事にして呉れと云われ、それを交換条件として、心にもない虚偽の自白をしたと云うが、右の事実はどうじゃ。
答 断じてそんな事はありませぬ。
証人佐藤警部補の取調べがすむと、次は渡辺刑事の訊問に移った。
裁判長は順序正しく逮捕当時の事から訊問を進めて、問題の中心たる拷問の事に及ぶと、渡辺刑事は、即座にきっぱりと否定をした。
と、突如として、
「馬鹿野郎」
と云う破鐘《われがね》のような声が満廷にひゞき渡った。
神聖なるべき法廷で大喝一声馬鹿野郎と叫んだものは誰ぞ。満廷色を失って声のする方
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