た事件は読者諸君の記憶に尚新なる所だろう。あの山田と云う男が庄司利喜太郎とやはり高等学校を同じゅうした、ずっと後進なのだ。彼は後に身を誤ったが、世話好きな豪傑肌の男だったと見え、よく友人の尻拭などをしてやったもので、或る時友人の一人が酔った余り乱暴を働いて警察に留置され、事が面倒になったので、山田は母校の先輩である当時警視庁の官房主事をしていた庄司氏を訪ねて、援助を乞うた。庄司氏も事柄が高が酔興の失敗位だったので、その際の警察の署長に話してやって、学生を放免させた。
その後暫くしてから山田は又々真蒼な顔をして、警視庁を訪ね庄司主事に面会を求め、友人が人殺しをして発覚しそうになっている。ついては彼を満洲に逃がしたいから見逃して呉れと必死になって頼み込んだ。
無論庄司氏は首を振った。
「馬鹿な」
後に庄司氏は人に語った。
「酔っ払いの放免と人殺しとを一緒にするちゅう奴があるものか、ハヽヽヽ」
神戸牧師にしてもその通りだろうと思われる。人を殺人罪に陥れるのと、母校を同じゅうしただけの友人を庇護するのとは同日に論じられないではないか。
裁判長の、被告は暴行を加えた事を申し述べたかどう
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