り掘り出したる頭蓋骨の鑑定、支倉の旧宅出火当時の所轄警察署の調書の取寄せ、神戸牧師以下二十四名の証人の喚問、以上四項の申請をした。裁判長は合議の末頭蓋骨の鑑定、調書の取寄せ、神戸牧師以下八名の証人の喚問等を許可し、他は却下して閉廷した。
宮木判事は当時少壮有為の司法官だった。本事件審理後彼は長く欧米に遊び、親しくかの地の司法制度を研究して、帰朝後現に司法省内の重要なる椅子を占め、尚外務書記官を兼ねているのでも分る通り英姿颯爽、温容を以て人に接し、辞令企まずして巧で、加うるに頭脳明晰眼光よく紙背に徹する明《めい》のある人だったが、刑事裁判に長たることはこの支倉事件を以て始めとして且つ終りだった。たった一度の裁判に本事件の如き刑事裁判始まって以来の屈指の難事件に当ったのは彼の不幸か将《は》た幸か。加うるに本件の告発者たる神楽坂署長庄司氏は年来の旧知である。審理は慎重の上にも慎重を重ねる必要がある。宮木氏は、実に本件に於て彼の刑事裁判上の智嚢を傾倒して終《しま》ったので、よく本事件を裁断し得たのは、頭脳明晰にして精桿の気溢るゝ如き彼なればこそであろう。庄司署長と云い、宮木裁判長と云い、揃い
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